データベースについて

 奈良国立博物館が保管する「日本美術院彫刻等修理記録」は、日本美術院が明治32年(1899)から昭和19年(1944)にかけておこなった文化財修理の記録で、簿冊400冊余りとガラス乾板約7,000枚からなる。これらは日本美術院の改組にともなって新納忠之介(にいろちゅうのすけ)家の所有になっていたものを昭和29年(1954)に奈良国立文化財研究所が引き継ぎ、その後、奈文研美術工芸研究室と当館との合併にともなって移管されたものである。
 「新納資料」と通称されるこの資料の重要性は、はやくから注目を集め、奈文研時代に奈良・京都所在の仏像についての内容が整理翻刻されて全14冊の報告書にまとめられた。しかしながら、東北から九州におよぶ大半の地域についてはこれまで公表されることはなかった。当館では平成21年(2009)より資料の保存と公開をめざして整理に着手し、簿冊・零葉(一枚ものの資料)とガラス乾板のすべてをデジタル化するとともに、その目録情報を作成し、これらをもとにデータベースを構築した。
 データベースでは、紙資料については一冊あるいは一箱ごと、ガラス乾板は文化財ごとのフォルダ構成として、全体を通覧できるほか、キーワード検索も可能である。

 資料はもと美術院側の控えとして伝わったもので、その内容は文化財の調書・修理設計書・解説書・図解のほか、会計書類や書簡など多岐にわたる。これらはおよそ百年前にはじまる近代の文化財修理の歩みを跡付ける貴重な歴史遺産であり、また現代の修理や美術史研究にも学術的な観点から寄与するところが大きいものと考え、そのすべてをデジタルデータで公開する。多くの方々の利用に供することができれば幸いである。

2014年 7月
奈良国立博物館